『 多忙につき ― (3) ― 』
ぱたぱた ぱた ぺたぺたぺた ---
きゃは~~ えへへへ ~~~
甲高い笑い声と一緒に チビ共はバス・ルームから駆けだした。
「 あ! こら~~~~ ちゃんとふかないとダメだあ~~
ってか ぱんつ はけ~~~~~ 」
ジョーの奮戦も虚しく ヤツらはするり、と父のバスタオルから
抜けだしてしまったのだ。
「 ・・・ もう~~~~ ・・・
まあ ・・・ 風邪ひく季節じゃないから いいけど ・・・
ふは~~~~~~ こりゃ 完敗だなあ 」
自分自身もびしょ濡れのまま ― 彼はふか~~~いため息をついた。
一人で双子のチビ共を風呂に入れるのは ― 至難のワザだった。
晩御飯作りを手伝ってくれたり 案外聞き分けのいい様子に
ちょっとばかり油断した のかもしれない。
「 ・・・ あ~~~ やっぱアイツら、ただのガキんちょだ・・・ 」
ジョーは深い ふか~~い溜息をつき、のろくさバスタオルで
自分の身体を拭った。
「 ちゃんと話せば 言うコト、聞くって思ったのが 敗因だな
だいたいちゃんと洗ったのか??
お風呂 ひとりであらえる~~って威張ってたけど
二人で水遊びしただけじゃないか~~~~
・・・ くそう~~~ 安易に信じたのが甘かった! 」
バサ -- 彼はバスタオルを洗濯籠に放り込んだ。
はあ ・・・・
なんか湯当たりした かも・・・
! しっかし!
毎日 フラン、 アイツらを風呂に入れてるのか?
一人で ・・・?
あ 博士が手伝ってる か・・・
しかし それにしても なあ~~
すごいよぉ~~ お母さんってば・・・
なんとかパジャマに袖を通し ( パンツも履いて! )リビングに向かったが
廊下には 点々と小さな水溜りが続いていた。
「 ・・・ あちゃ~~ 拭いとかないと・・・
あ アイツら ハダカだよなあ パンツは ・・・ 持ってきた。
お~い すばる~~ すぴか~~~ 」
ドタバタ バタ --- かなり本気で走った。
「 すばる すぴか! これ 着ろ~~~ 」
ジョーがチビ達のパジャマを持って 覚悟してリビングに入った。
う~~~ ~~
マッパで 遊び回ってるんだろうなあ
ソファとかあちこち びしょ濡れにして・・・
「 すぴか ! すばる ! ・・・ あ れ ? 」
リビングでは ―
「「 なにか ごよう? おと~さん 」」
並んでソファに収まり 二組の色違いの瞳がジョーを見上げている。
「 ・・・ え ・・・ あ あ~~ ? 」
チビ達は色違いのパジャマを着て 絵本を広げていた。
「 あの ・・・ パジャマ ・・・どこにあったんだい? 」
「 あのね ここにいつも あるの。 」
すぴかが リビングの隅にあるチェストをさした。
「 お風呂のときね ここできるんだ~ 」
すばるも にこにこ・・・ 同じ場所を指す。
「 ・・・ あ そうなんだ? 」
「「 うん 」」
「 あ! パンツ! はいてないだろ!? 」
「 やだ~~ ちゃんとはいてるよ~~ ね~~ すばる? 」
「 ね~~ すぴか。 ほら~~~ 」
すばるは わざわざパジャマをおろしてみせてくれた。
「 あ・・・? あ ああ そっか・・
あ あのう・・・ いつもそうなのかい? 」
「「 ?? 」」
「 だから そのう~ いつも風呂のあとはここで
着替えるの? 」
「「 うん 」」
「 そっか・・・ お父さん 知らなかったよ 」
知らなかった。 最近はチビ達と風呂に入ることはなかったから。
チビ達を両手で抱えなくちゃならない頃は
フランソワーズと一緒に お風呂 やっていた。
その頃は 二人じゃなくちゃチビ達の風呂は絶対に無理だったから。
だけど 最近は彼らのお風呂たいむ にはまだ帰宅できていない。
日曜は一緒にお風呂するけれど 彼は二人を座らせ順番に洗いあげ
・・・ あとは脱衣所ではバスタオルを広げ妻が待っていてくれる。
う~~~~
全然知らなかった ・・・
日曜の風呂は ― ぼくの担当って、半分だなあ
結構 育児した気分になってたけど
・・・ 全然だめじゃん。
ごめん フラン~~~
・・・毎日 大変だよね
ごめん・・・!
ジョーはこころの中で妻に手を合わせた。
「 なあ 二人とも。 お風呂の後はちゃんと身体、
拭かないと ダメだよ 」
「 も~ かわいた~~~ 」
「 かわいた~ 」
「 そういうことじゃなくて だね 」
「 かわいたよ~~~~ 」
すぴかは ぶんぶん~~~ アタマを振ったが
金色の髪から 水滴がぴぴぴ・・・・ と飛んできた。
「 うわ・・・ ほらあ~ 髪 濡れてるよ?
こっちおいで 」
「 ん~~~ ・・・ あ きゃあ~~ 」
お父さんの膝の上にすわり ごしごしごし~~~ ばすたおる攻撃をうけ
すぴかは もう大喜び・・・
「 こらこら じっとしておいで 髪 かわかすからさ 」
「 ん~~~~ あはは~~ 」
「 おと~さん 」
つんつん。 すばるがパジャマの上着をひっぱる。
「 ん? ああ 次はすばるな~~ 」
「 あのね おか~さんね いつも ご~~~~ だよ 」
「 ご~~ ??? 」
「 うん。 ・・・えっと これ~~ 」
すばるは さっきのチェストの中からドライヤーを
引っ張り出してきた。
「 あ・・・ ここにもドライヤー あったのか 」
「 ご~~~ やって おと~さん 」
「 よしよし ・・・ すぴか? 乾いたかい 」
「 ん~~ あは おと~さん みたい~~~
くりん くりん くり~~ん 」
すぴかは ぐしゃぐしゃになった髪を振り回して喜んでいる。
・・・ おと~さんみたい ってなんだよ?
これでもちゃんとアレンジしてるんだぜ~~~
父はちょっとばかり傷ついた・・・
あの髪型は 彼なりにかなり気を使って整えている ・・・ らしい。
「 おと~さん ご~~~ して 」
「 ああ ごめん ・・・ すばる、ほら こっちにおいで。
・・・ あれ? すばる シャンプーしたかい?? 」
「 ・・・ あ~~~ わすれてたア~~ 」
「 おいおい~~~~ 」
「 僕 あした あらうね~~~ 」
「 ・・・ あ ああ そうだね~~ ( ひゃあ 可愛い ) 」
満面の笑顔で ― すばるは いとも簡単に父親を陥落させた。
「 うん♪ 」
「 ・・・ う~~ なあ いつもリビングでパジャマに着替えるのかい 」
「 ?? ぱじゃま~ きてる 」
「 ぱじゃま~~ ぱじゃぱじゃ ぱじゃまあ~~~ 」
わかっているのか いないのか 上手にはぐらかされてしまった・・・
気がしないわけでもない。
チビ達にとって それほどの問題ではないのだろう。
「 う~~~ ・・・ まあ いっか・・・
さあ 二人ともそろそろネンネの時間だね 」
「 おやすみなさい でしょ おと~さん
ネンネ は 赤ちゃんだよ~~ 」
「 僕ね 僕ね ひとり でねれる~~~ 」
「 アタシだって~~~ ようちえんせい だもん! ひとりでねれる! 」
「「 おやすみなさ~~い おと~さん 」」
チビ達は お父さんにむかってお辞儀をするとわさわさ・・・
手を振っている。
おっとお~~~~~
これは フランの躾けか??
ふふ~~ん 尊敬されてる?
・・・ なんか昭和のオヤジになった気分だよ
ジョーは 一瞬固まってしまったが すぐに笑顔で腕を広げた。
「 おやすみ~~~ すぴか すばる。
今夜はね~~~~ お父さんと一緒に寝よう! 」
え ・・・ 今度はチビ達が固まっている。
「 さあ~~ 一緒にさ 」
「 ・・・ アタシのべっど ・・・ おと~さん はいる? 」
「 僕のべっど おっきくないんだ おと~さん 」
「 え?? 」
「 あのね おと~さん。 アタシ ひとりでねれるよ~~ 」
「 僕も 僕も~~ くまさん いればへいき! 」
「 ・・・ あ~~~ そうなんだ?
あの さ。 でもね ― そのう~~~
お父さんが すぴかとすばると一緒に寝たいんだ。 」
「 おと~さん が? 」
すぴかの目が またまたまん丸になる。
「 ・・・ おと~さん ないちゃう? ひとり だと? 」
すばるがなんと涙声になっている。
「 あ~~~ いや ・・・ 泣かないけど・・・
でもね 二人と一緒に寝たいな~~ ダメかなあ 」
「「 ・・・・ 」」
チビ共は顔を見合わせていたが ちょっとばかりぎこちなく
返事をした。
・・・ いいよ おと~さん
「 そっか~~~~ うわあ~~ お父さん ウレシイなあ~~ 」
ジョーはかなり本気で喜んで我が子たちを一緒くたに抱き上げた。
「 さあ~~~ それじゃ三人で 一緒にねような 」
「「 ・・・ うん ・・・ 」」
一人で盛り上がっていたので 彼はチビ達のちょいと複雑な表情に
まったく気づいていなかった。
バサ ---- ベッド・カバーをどける。
「 ほうら のっかっていいよ~~ 」
「「 ・・・ 」」
チビ達は両親の広いベッドの前で たちんぼしている。
「 う~~んと お父さん、 真ん中に寝るからあ
二人は こっちと こっち かな 」
ほら おいで・・・と ジョーは ぽんぽん・・・ と
ベッドを叩く。
「 ・・・ アタシぃ~~~ ここ。 」
すぴかが えいやっとベッドによじ登った。
「 僕ぅ~~~~ 」
「 うん すばる? ほうら ・・・ こっちだ 」
「 ・・・わ ・・ 」
ジョーは軽々すばるを ベッドの反対側にのっけた。
「 さあ~~~ お父さんも寝るぞぉ~~ 」
「「 ・・・・ 」」
チビ達は ごそごそ・・・タオルケットの間に潜ってきた父から
反射的に少し離れた。
「 あれ ほらほら もっとこっちおいで~~
ほらほら すぴか・・・ お父さんの脇のとこに枕おくよ?
すばる~~~ おいで くっついていいよ~ 」
「 「 ・・・ う うん ・・・ 」」
ごそ ごそごそ ・・・・ チビ達はやっと寄ってきた。
「 ウン じゃ 今度こそ おやすなさい だね 」
ジョーは夢の、いや 憧れの 親子川の字 で
( 川 じゃなくて 小 の字だけど )もう うきうき~~♪
「 すぴか すばる~~ せ~~の ・・・ 」
「「「 おやすみなさ~~い 」」」
ふぁ ~~~~ くぅ~~~
すぴかは ほぼ < 瞬眠 > だった。
ジョーの側に潜り込むなり く~く~~~ ・・・ 寝息をたてはじめた。
「 すぴか・・・? ああ もうネンネしちゃったのかあ~~~
うわあ・・・ 寝顔 最高~~ 僕の天使ちゃん♪ 」
彼は愛娘のまあるいほっぺを そ・・・・っと撫でた。
「 ねえ おと~さん 」
反対側から の~んびりした声がした。
「 ん? ああ すばるはまだ寝ないのかな 」
「 うん。 あのね おと~さん。
けいきゅうのどれみしゃりょう って しってる? 」
「 どれみ・・・? しらないなあ あ おもちゃかい 」
「 うう~~ん ホンモノだよ 」
「 そっか~~ こんど一緒に見にゆこうか ・・・
さあ すばるもネンネしろよ 」
「 うん ・・・ 」
ぽんぽん と軽くタオルケットを叩けば すばるはちゃんと目を閉じる。
「 ・・・ そうそう おやすみ~~ ・・・ ふぁ~~~~ 」
本日の奮戦で ジョーも眠気がどっと襲ってきて・・・自然に瞼が・・・
「 ねえ おと~さん 」
機嫌のよい の~んびりした声が また彼を呼ぶ。
「 ・・ う ・・・? ああ すばる 」
「 あのね ぼくね けいきゅうのあかいしゃりょう、すき 」
「 ・・・あ ああ そうだねえ・・・ 」
「 どれみしゃりょう のりたかったなあ 」
「 そっか 次の日曜にのりにゆこうな 」
「 うん!! ど~れみふぁそらし~~~ ってねえ 」
「 ・・・ うん さあ 寝ような 」
「 うん ・・・ 」
「 すばる~~は でんしゃがすき~~ ♪ 」
「 ・・・ えへ ・・・ 」
ジョーの珍妙な即興歌をききつつ すばるはすう~~っと目を閉じた。
やれやれ・・・ ほっとするとジョー自身も瞼がくっつきそうになり・・・
「 ねえ おと~さん 」
柔らかいトーンの声が彼を呼ぶ。
「 ・・・ う ・・・? な なんだい 」
「 あのね あしたね ぎうにうにおさとう いれていい? 」
「 ・・・ あ~ ? ・・・ いいよ
すばる、ぎうにう じゃなくて ぎゅうにゅう だよ 」
「 ふうん ・・・ おか~さん ねえ ぎゅ~にう には
おさとう だめって 」
「 そうなのかい ? じゃあ 明日 考えような 」
「 うん あした ね 」
「 ・・・ ああ さあ すばるもネンネしようなあ 」
「 ん~~ ぼくね あまいぎうにう すき~~~ 」
「 そっか・・・ 明日 な ・・・ 」
「 うん おやすみ~~ おと~さん 」
「 ああ お休み、すばる ・・・ 」
ぽん・・・と 自分と同じ色のアタマに手を当てると
優しい茶色の瞳は ゆっくり閉じた。
ふう・・・ ジョーもとろ~~んと夢の国 へ・・・
「 ねえ おと~さん 」
ジョーが とろとろし始めると 隣からにこにこ・・・
声がやってくるのだ。
「 あのねえ 僕ね~ 」
「 ・・・ あ ・・・ あ? 」
「 あのねえ ようちえんでねえ 」
「 ・・・ そっか ・・・ ( くう ・・ ) 」
「 ねえ おと~さん 」
う~~~~~~ ・・・・
ね 寝かせてくれえ~~~
またウトウトしかけると すばるがこそ・・・っと話かけてくる。
「 ねえ おと~さん 」
「 ・・・ な なに ・・・・ 」
「 あのねえ 僕ね ぎうにうぜり すき~~ 」
「 ・・・ ああ そうだね お父さんも好きだよ 」
「 うん ・・・ 僕ね 僕ね ・・・ ひみつなんだけど 」
「 ・・・ うん? な に・・・ 」
「 うふ ・・ 僕ね おか~さん だいすき♪ 」
「 ・・あ? そうだねえ ・・・ おと~さんも だいすき さ 」
「 そんでもってね~ 僕 おか~さんとけっこんするんだ~ 」
「 ・・・ そ うか ・・・ よかったなあ ・・・ 」
ジョーは 半ば無意識に このちっこいライバルの肩を抱いた。
「 ・・・ ねえ ・・・ おと~ さん ・・・ 」
「 ・・・ あ ああ ? なんだ い 」
「 ・・・・・・ 」
最後は どうも寝言だったらしい。
ベッドに入ってもすぐには眠れないすばる、でも 不機嫌になるわけでもない。
自分の状態をよくわかっていて しばらくおしゃべりしたり空想の世界で
遊んだりしてから ゆっくりと眠るらしい。
だ け ど。 いちいち相手をしていたらたまったものでは ない。
! そっか・・・
フランってば チビ達と同じベッドで寝ないもんなあ・・・
知ってたんだ? コイツらのこと・・・
う~~~む・・・ 母親には負けるなあ
は~~~~ ~~~~ ま とにかく
やっと寝てくれたか ・・・ !
ほっとして少し身体の向きを変えた ― 途端に。
ぐわんっ!!
009は背中に 激しい衝撃を受けた!
「 !!! な な なんだ !?? 」
完全に無防備で油断していたので まともに受けてしまった。
いかに009であろうとも これはかなりのダメージだ。
くう ~~~~~ ・・・・ !
敵襲か?? と 無理矢理身を起こせば ―
となりには ちっこいあんよ。
「 !! え ・・・ す すぴか か??? 」
衝撃の一発 は 熟睡してるすぴかの 蹴り だったのだ。
ひえ~~~~~ ・・・・
すごいな・・・ おい
すぴかは寝ながらにして 天下の! サイボーグ009 を
驚愕せしめたのである。
いて ・・・ こりゃ 青タン必須だなあ
・・・ 博士が帰ってきたら
念のため メンテナンス 頼もう
ジョーは背中を気にしつつ でももうめちゃくちゃに眠かったので
そのまま 寝落ちしてしまった。
もぞもぞもぞ ・・・ 右脇の下が蠢いている。
ごそごそごそ ・・・ 身体の左側からタオル・ケットが消えた。
「 ・・・ う ・・・・? 」
ジョーは ぼ~~~んやり うす~~~く目を開けようかなあ~~~と
思って でも まだアラームは鳴ってないしいっか~~~ と
もう一度 目を閉じようと ― したその瞬間。
「 おっはよ~~~~~~ おと~さん すばる~~~~ 」
元気いっぱい甲高い声が響きわたった。
う ・・・?
同時にタオルケットは完全に消え ― ここで彼ははっと覚醒し
( さすが 009 ) いっせ~のせっ で自分に
ダイブしてくるすぴかを 抱き留めた。
「 ・・・ す すぴか 」
「 きゃっほ~~~ おはよ~~~~ おと~さ~~~ん 」
「 お おはよ・・・ もう起きたのかい 」
「 うん♪ おと~さん もおきた?
」
「 ああ。 完全に目が覚めたよ ・・・・
( ひえ~~~ 眠っていて まともに腹にダイブされたら・・・) 」
ジョーは ぞっとした。
「 すぴか。 あのさ おはようって言ってから 跳んできてくれよ 」
「 あは? アタシ しっかりおきてるも~~ん 」
「 だから さ ・・・ あ すばるは? 」
「 ん? すばるはね~~ ゆっくりおきるの。 」
「 ふうん ・・・ 」
そっと 右側を見れば ジョーの息子は く~~く~~~~・・・・
寝息をたてている。
「 ありゃ 本当だ まあ いっか ゆっくり寝かせてとこう。
じゃ すぴか~~ 顔、 洗いにいこ! 」
「 うん!! 」
お留守番 二日目は実にいい感じで始まった ―
ふふふ ・・・ いいじゃん?
この調子で行けば 楽勝だな~~
フラン~~~
ウチのことはぼくに任せて
しっかり踊ってくるんだよ
さあ チビ共~~
お父さんと楽しい休日だ♪
ま~~ずは 美味しい朝ご飯☆
「 すぴか~~ お父さん 朝ご飯、作ってくるから。
お願いがあるんだけどなあ 」
「 なあに おと~さん 」
「 裏庭の野菜畑にね お水を上げてくれるかな~~
お父さん キッチンの窓から見てるから 」
「 うん! アタシ~~ おみず、あげるの、じょうずなんだよ~~ 」
「 そうなんだ? すごいなあ ・・・
あ お父さんがね 大きなバケツにお水を汲んでおくから
すぴかは如雨露で しゃわ~~~~ って ・・・ できるかい 」
「 できる!!! すぴか じょ~ろ すき(^^♪ 」
「 そっか~~ あ 服が濡れてもいいからね 」
「 うん! あついから かわくよね~~ 」
「 うん うん ・・・ さあ 一緒に裏庭に行こう。
び~さん、履いておいで。 」
「 はあ~~~い 」
すぴかは玄関にすっとんで行った。
「 ふふふ 本当に元気のカタマリだなあ・・・
ま びっしょびしょになっていいさ 着替えて朝ご飯 さ 」
ジョーは でっかいバケツに水を満々・・・ 裏庭に出た。
「 おと~~さ~~~~ん !! おみず~~~~ 」
「 ここだよ~~ はい 如雨露。 」
「 うん! はたけ い~~っぱい じゃばじゃばするの? 」
「 そうだね~~ トマトにナスさん達に 朝ご飯 をあげてくれ 」
「 うん! 」
すぴかは 赤い如雨露にお水を入れて畑に駆けていった。
ほ・・・っんとに元気だなあ~~~
朝ご飯 たっくさん食べるだろうなあ
さあ こっちは飯づくり だ!
ジョーは うきうき・・・ キッチンに立った。
「 さあ 卵焼だ! ふっふっふ~~~~
この日のために 鍛錬に励んだぞ!
大人に御指南ねがったし これも密かに購入しました♪ 」
じゃ~ん ・・・ と 彼は四角い、卵焼き専用のフライパン?を
取り出した。
「 これこれ・・・ 日本古来の伝統的な! 卵焼 を作るぞ~~
ちゃんと練習したんだ。 菜箸でさ こう~~ くるくる・・・ってね。
チビ達 びっくりするかもなあ~
< お父さんの卵焼きがいい > なんて言い出すぜ きっと(^^♪
へっへっへ~~~ 」
彼は 慎重に卵をチェックし 四個、取りだした。
「 うん・・・ 出汁巻き は あまり子供向きではないからな・・・
伝統的な お弁当の卵焼き にするぞ。
ちょこっとは砂糖を入れるか・・・ すばるが喜ぶよな~~~ 」
カチャ カチャ カチャ
卵を割り菜箸で慎重に攪拌する。
「 泡をたてない ・・・っと。 白身と黄身をよ~~く混ぜてっと。
味付けは 塩と砂糖少々・・・。
あ~~ 付け合わせは 浅漬けキュウリ! これ 美味いんだよなあ~~
あと・・・ お ミニ・トマト があるな~~ よしよし ・・・ 」
自信満々 余裕の笑みで お父さんの朝ご飯 の献立は出来上がった。
「 さあ これで鍋 ( 四角いフライパン ) に油をなじませ~~
・・・うん? 」
きゃ~~~ あはは えへへへ わあ~~~
裏庭が急に賑やかになった。
「 なんだ?? すぴかってば一人で盛り上がっているのかあ? 」
・・・ あ !!!
ひょい、とキッチンの窓から裏庭を眺め 次の瞬間
( とにかくガスを止め ) 心の中で かそくそ~~~ち!!!
と唱え 裏庭にすっとんで行った。
裏庭の野菜畑では びしょ濡れのすぴかと パジャマ姿のすばるが
ひらひら きゃらきゃら~~ 走り回っていた。
「 すぴか~~~ お水あそび じゃないぞう~~
すばる~~ パジャマは着替えないと~~~ 」
「 あははは~~~ あ おと~さ~~ん
ね ね じょ~ろでね~~ しゃわ~~~~~~ なのぉ 」
すぴかはもう全身 ずぶ濡れで如雨露を振りまわす。
「 えへへへ ・・・ おと~さ~ん 僕ね しゃわ~~~してるの。
きもちいい~~~ 」
パジャマのままのすばるも 全身げでげでだ。
「 すぴか ・・・ なあ 畑の野菜さんには 」
「 おみず あげたよ~~~~ そんでね すばるがきたの 」
「 すばる? いつ起きたのかい 」
「 ん~~~ すぴかがよんだ~~~ あはは きもちい~~~ 」
チビ共は もう最高にご機嫌ちゃんなのだ。
ううう~~~~ コイツらア~~
・・・ 放っておいたら
裏庭中 げでげでで駆けまわるぞ
― 冗談じゃあないよ。
これから 朝ご飯 なんだから。
がし。 がし。 ジョーはチビ達を抱き上げた。
「 わきゃ?? おと~さ~~ん 」
「 おと~さ~~ん わあい~~~ 」
「 二人とも。 さあ 着替えて朝ご飯! 」
「「 え~~~~ 」」
問答無用、と父は双子を抱えてバス・ルームに直行した。
洗濯モノ 第二弾 だ っ!
― 30分後。
洗いあげられ さっぱり着替えて 双子は神妙な顔で
キッチンにいた。
「 さあ。 お父さんはこれからご飯を仕上げるから。
二人はちゃんと座っていること。 できるね? 」
「「 うん 」」
お父さんの いつになく真面目な顔と声に
すぴかもすばるも こくん、と頷いた。
「 よし。 じゃあ すぐに出来るからね。 ここで待つ。 」
「「 うん 」」
・・・ ジョーはすご~~い真剣に神経を研ぎ澄まし ・・・
卵焼きを作った。
ジュワ ~~~~~
・・・ 卵は従順にジョーの菜箸に従ってくれた。
チビ達は 自分の椅子に座り大人しく待っていた。
「 さあ 二人とも。 ちゃんと待てたね 」
「「 うん 」」
「 よおし それじゃ朝ご飯にしよう 」
「「 うん 」」
コトン コトン
二人の前にいつものお皿が置かれた。
「 はいよ~~~ 卵焼きだ 召し上がれ。」
チビ達は じ~~~~っとお皿を眺めている。
「 ・・・ これ なに。 」
「 なに・・・って 毎朝のたまごやきだよ? 」
「 ・・・ おむれつ? 」
「 ん~~~ っていうか 卵焼 さ。 美味しいよ 」
「 ・・・ ふうん ・・・? 」
すぴかはお箸でつんつんしてから 端っこ千切り口に入れた。
それを見てから すばるも丁寧にお箸で分けて一切れ食べた。
「 ・・・な? 美味しだろ? お父さんの自慢の 」
「 アタシ。 おか~さんのが いい 」
「 これ・・・ あまくない 」
チビ達は無慈悲で正直な感想を述べる。
「 そっかなあ~~ これはなあ お父さんの卵焼きだから さ
お母さんのとは違うんだよ 」
「 ・・・ おと~さん おしょうゆ、かけて 」
「 僕 おさとう!! 」
「 そっか ・・・ すぴか ほら 自分でかけなさい。
すばる お砂糖はダメだなあ ハチミツにしよう 」
「「 ・・・ うん 」」
結局 すぴかはじゃぶじゃぶに醤油をかけ
( ・・・ これあじゃ 醤油漬け じゃないか~~ )
すばるはハチミツだけじゃなくてパンに塗るマーマレードもなすりつけ
( ほ・・・っんとに 甘党 なんだなあ )
なんとか食べ終わった。
卵焼きと付け合わせのミニ・トマトを齧りいつもの通りトーストも一枚平らげた。
浅漬けキュウリ は みごとにシカトされてしまった。
「「 ごちそうさま 」」
ちゃんと手を合わせてから すぴかは椅子から滑り下りた。
「 はい。 あ すぴか まだお外はだめだよ 」
「 ・・・ うん ・・・リビングにいる 」
「 よし。 すばる? ほら もうちょっとだから食べちゃおう 」
「 ・・・もう いい。 」
すばるはカップを置いて 椅子の上でもじもじしている。
「 あ お腹いっぱいかい? 」
「 ・・・ ぎうにう あまくないんだもん 」
「 朝の牛乳は お砂糖ナシだよ? お母さんだってそうだろう 」
「 ・・・ いつもは ジャム いれるの 」
「 え 牛乳にジャム?? 」
「 うん。 あまくておいしいよ~~ 」
「 う~~ ともかく今朝は 甘いのはなし。
じゃ リビングで待ってて。 お父さん 後片付けするから 」
「 ・・・ 僕 おてつだい する すぴかぁ~~~~ 」
「 なに すばる 」
あっという間に すぴかが戻ってきた。
「 おと~さんのおてつだい。 いっしょにしよ? 」
「 いいよ~~ おと~さん ふきふき? 」
「 え~っと ・・・ あ ・・・
うん まずは二人 ここに座ってくれるかい 」
ジョーはチビ達をちらっと見て すぐに気付いた。
・・・ ははあ 眠いんだな?
ま ね。
朝っぱらから 水撒きで大騒ぎして
お腹いっぱいになれば~~
眠くなるのは自然の理 ってやつさ
「「 いいよ 」」
「 ちょっと待ってて ・・・ 」
ジョーは ( かそくそ~~ち と密かに呟き ) 超手早く食器を洗った。
「 ・・・っと よし・・ っと。
さあ すぴか すばる~~~ ・・・ あは 」
振り返れば ―
食卓にもたれて二人は く~く~~ < 朝寝 > していた。
「 あは ・・・ まあ ゆっくり寝ておいで 」
ジョーは そうっと そうっと チビ達をリビングのソファに
運んだ。
フラン~~~~~ ・・・
ごめん。 ホントに ごめん。
ぼく 全然子育てに参加できてなかったよなあ
こんなに大変なのに ・・・!
― ようし。 今から育児主任 だ!
― さて 時間は少し先になりまして。
こちらは 旅公演先のフランソワーズさん、ホテルの小部屋。
公演二日目の夜、たまらずウチに電話して 大泣きし。
そして 気持ちよ~~~く熟睡したはずが ぽっかり目が覚めた。
・・・ あ ・・・ ?
時計を見ても まだまだ真夜中。
「 ・・・ あら この時間って ・・・
チビ達のミルクタイム だった時間だわ 」
もう すっかり忘れていたのに ふと・・・ 数年前の習慣が蘇った。
あの頃はもう無我夢中だったっけ。
「 ふふふ ・・・ 夜中に起きる なんてできっこないって
思ってたけど あの頃は習慣になってたわねえ 」
不意に 赤ちゃん時代のすぴかとすばるの感触を思い出した。
「 ごくごく・・・すごい勢いで飲むのよね すぴかって。
すばるは の~~んびりゆっくり でも いつまで~~も
飲んでたっけ・・・ 」
甘い乳児の匂いまで 鼻先に感じてきた。
「 ・・・ ふふふ ・・・ 今 思えば可愛い過ぎの時代よねえ
あ~~ さっきの画像 可愛いかったなあ ・・・
なんか ・・・ 泣いたらすっきりしちゃった 」
もう ウチは 二人で十分 と思ってたけど。
もしかして ・・・ もう一人くらい
いてもいい かも・・・
ジョーはとても子供が好きで、というより < 家族 > が好きで
次の子を欲しいと思っているのは ずっと前から知っている。
彼は いい父親で子育てに共に参戦してくれているし
彼女の仕事にも理解がある。
ワン・オペ育児 には絶対にならない とは思う。
でも ・・・ あのう ・・・
もう いいかなあ って わたし、思ってて
二人いればいい と思っていたの。
でも ・・・。
ジョーが望むなら。 彼が幸せになるのなら。
これは もう一回 ちゃんと相談しなくちゃ・・・ と
彼女はふか~~く頷いた。
そうよ。 ウチのことは二人で決めなくちゃ ね
さあ~~~ とりあえず
明日の千秋楽~~~ がんばるわ!!!
フランソワーズは とてもとても幸せな気分で
再び 眠りに落ちて行った。
Last updated : 08.02.2022.
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******** 途中ですが
どんな仕事 でも 楽しいだけ なんて ないですよね~~~~